新学部・新学科設置について

ABOUT KNWU

室井 廣一

MUROI HIROICHI

新学部・新学科設置準備室 室長
学校法人 東筑紫学園 理事長
九州栄養福祉大学・東筑紫短期大学 学長

九州栄養福祉大学
新学部・こども教育学部こども教育学科
食物栄養学部内新学科・食環境データサイエンス学科
令和7年(2025年)設置について

新設のこども教育学部こども教育学科について

我々は北九州の中心のエリア、若者の街下到津のクロスロードで、東筑紫短期大学保育学科で70年にわたり幼児教育者・保育者養成に務めてきました。卒業生は1万2千8百名を超え地域社会の保育・幼児教育に貢献してきました。我々はこの伝統を持つ東筑紫短期大学保育学科を基盤として、男女共学のこども教育学部・こども教育学科を開設します。

そこでは幼稚園教諭一種免許状や保育士資格だけではなく、小学校の教員免許、さらに特別支援学校教諭の免許状も取得できるようにしたいと思います。乳幼児から小学校児童そして特別支援の分野までを包括する教育的視野を持った人材を養成したいと思っております。つまりこれまでの短期大学と四年制大学の両体制で、直面する様々な教育課題に対応し教育の高度化多様化を図っていきたいということであります。又、短期大学保育学科の四年制本学部への「3年編入」制度や卒業生のリカレント教育も計画しております。

もうすぐ学園創立90年になりますが、いよいよ本学園の建学の精神・筑紫の心・四つの心に基づく教育も、幼児教育・保育から初等教育まで結ぶ段階に来たということであります。 この少子化の時代、幼児教育と小学校教育の結び目はとても大切だと思っております。
この学部がそういう時代の課題に応える地域の教育組織拠点になることを心から祈念しています。

教育施設・設備面では、一号館(地下一階地上六階・一部七階)を全面改装してこども教育学部と短期大学保育学科が使用、更に隣接している五階建ての旧学生寮を全面改装して保育学科と食環境データサイエンス学科の研究棟にする計画です。尚この研究棟の一階には保育学科の専攻科介護福祉専攻の施設も入ります。本学の「教育理念・四つの心」が生きている便利で美しいキャンパスを創り上げるつもりです。

新設の食環境データサイエンス学科とその先導的使命

さて来年はもう一つ新しい食環境データサイエンス学科が食物栄養学部に設置されます。

今最も注目されているデータサイエンスやAIに関わる勉強をする学科になりますが、本学のデータサイエンスの特色は、食と環境とデータサイエンスを結んだ文字通りの、食環境のデータサイエンスということになります。こういった方向性の学科ができるのは全国でも初めてだと思います。東京の方に似た学科ができると聞いていますが、少し本学とはコンセプトが異なるのではないかと思います。本学はあくまでも食環境や食の流通過程に関するビッグデータを処理できる人間を育てたいと思っています。

更に、本学はリハビリテーション(理学療法士・作業療法士)と管理栄養士の養成大学なのでこの分野におけるデータサイエンス化は進めていかないといけませんし、こども教育学部でもデータサイエンス化は進めていかなければなりません。また短期大学の方にも取り入れていかなければなりません。そういう様々な要望期待を踏まえて応えていく先導的使命がこの学科にはあります。それに伴い各学科でもそのような講義・演習が受けられるようにもしていかなければなりません。

食環境データサイエンス学科設立に助力してくれた二人のキーパーソン
  • 新学部・学科設置準備室 顧問 熊谷 彰 氏
    元 株式会社安川電機CTO(取締役常務執行役員 技術開発本部長)
  • 代表取締役社長 菅谷 俊二 氏
    日本のIT分野・特許資産個人ランキングNo.1
    株式会社オプティム(東証プライム企業)

(特別客員教授就任予定)

しかし今は来年に向かって取り急ぎこの新しい学科を創り上げることが重要です。しかしながら、いわゆる第四次産業革命時代の最新知識を教育研究する専門家は本学の先生方だけでは到底困難であります。私たちの力だけではできないので、そういう最新技術を実際に開発してきた人たちの助力や連携が必要になってきます。

幸いロボット工学で日本の産業を牽引してきた株式会社安川電機の元CTO、最高技術責任者・熊谷彰氏が定年退職され、北九州に住んでいることもあり本学の設置準備室顧問・開学後は特別客員教授という形でお迎えすることが出来ました。今学科設置の基本的なところを準備していただいています。

更にIT関係の特許、発明で日本一と言われる株式会社オプティム(東証プライム上場企業)の菅谷社長が我々の教育理念に賛同してくださり第一線で活躍している専門家を教員に派遣してくれるだけではなく最先端の演習教室の設計、企業実習も受けてくださるということになりました。又開学後は特別客員教授に就任してくださるとのことで、我々の新学科構想は大きく前進しました。

菅谷社長は一部の人からは日本のエジソンとも言われ独特の経営哲学を備えたまだ40歳代の新進気鋭の人です。
特に、あまり目前の利益にはつながらないような、我が国の食の安全保障、即ち、「日本の農業問題をどうするのかという大難問(アポリア)」に「スマート農業」という視点から相当の情熱をもってチャレンジしています。雰囲気も社長というより、第四次産業革命時代のパイオニアとでもいうべき印象です。佐賀大学農学部出身でおそらく日本の農業問題への強烈な関心から、大学の実習農園で種蒔き祭や収穫祭を行い「食の番人」を養成するという教育理念を持った九州栄養福祉大学に関心を持ってくれたのだと思います。

食環境データサイエンス学科設置に賛同し企業実習や共同研究・地域振興のための地域連携活動に協力提携してくれた約20の地元北九州地域を中心とした食産業・IT関連企業及び団体

我々のこの食環境データサイエンス学科構想には更に又、地元北九州地域を中心とした約20の食産業・IT関連企業及び団体が賛同し学生の企業実習や講師派遣、共同研究並びに地域貢献のために連携協定を結んでくれました。

我々の新学科・食環境データサイエンス学科は強い現実構成力を持ってきました。

賛同してくれた企業の皆様や地域団体の皆様と交流する「地域連携センター」は一号館一階に設立します。企業実習等も本学で可能な限りできるよう小倉北区キャンパス五号館の設備改装を行っています。実際にはまだ分かりませんが、今担当している教授から聞きますと説明会などしなくてもここを案内して設備を見ていただくだけでも説得力のあるものを造りたいとのことでした。よほど最新の設備を造ってくれているのだろうと思います。(本学科設立には学位授与機構から約4億円の助成金の交付が予定されています。)

九州栄養福祉大学「KIDS LABO.」の設立について

尚この他に更に本学前の四つ角、クロスロードを500mほど行くと大きな交差点があります。
その交差点にある福岡銀行南小倉支店の跡地をお譲りいただき、この学科の付設ラボラトリー設立も準備中です。

南小倉駅から徒歩6~7分のところで、東筑紫学園中高部入り口の交差点に位置しています。あの場所は四つ角というよりも六つか七つの道が交差していて概ね七差路になっており、英語で言うとクロスロード(crossroad)というよりジャンクション(junction)というところです。このジャンクションと本学の下到津交差点から大体500mほどある通りが私は仮称「スクールクロスロード」になればいいと思っています。

実際に、この清水交差点から戸畑区までは幼児教育施設から小学校、中学校、高校、大学が立ち並んでいます。

この九州栄養福祉大学食環境データサイエンスラボラトリー(Kyushu nutrition and welfare university AI Innovation and Data Science Lab.)を略した「KIDS LABO.(キッズラボ)」には、バス待ちや電車待ちをする本学生のみならず高校生達も入館パス(無料配布)を持っている人は誰でも入れるようにしたいと思っています。無論そこにはデータサイエンスの最新機器を備えた学び場を作るつもりです。

高校生でも大学生でもそこで勉強でき、デジタルの分野、データサイエンスを学べるという場所を来年中に作り上げたいと思っております。皆さんのデジタルリテラシーを育む仲間がまたかなり増えると思います。

第四次産業革命時代の担い手・デジタル人材養成の緊急性とインフォメーションギャップ・非対称性の危険性

今世界はグローバルな規模でビッグデータがネットを通して結ばれています。
正に第四次産業革命に突入しています。そこでは多様なデジタル人材が要請されます。

一昔前は「読み、書き、そろばん」 「縫う、織る、染める」が人生を生きる大きな技術でしたが今はデジタルリテラシーを修得し大量のデータを解読し世界と交流していかないと「情報の非対称性」つまりインフォメーションギャップに陥る危険性もあります。

日本経済新聞(令和6年5月24日)は一面トップに「デジタル人材10万人育成」を掲げ、岸田首相はASEAN諸国と共同して今後5年間で10万人の高度デジタル人材育成を目指すと表明しました。同じく同紙6月9日では日立製作所が2027年をめどにAI人材を5万人育てる方針を明らかにしています。

又、皆さんの耳にも入っているかと思いますがTSMCという半導体の大工場が九州の真ん中の熊本にできています。3400人ほどの雇用が必要というのはその会社だけかと思います。それを取り巻く関係団体を入れたらばおそらく相当の数になるかと思います。それだけ多くのデジタル人材が今から必要になってくるのでしょう。

私達の地元北九州市では同じく日経新聞(6月22日)によれば日本IBMがAI活用の人工頭脳を活用した(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを始めるとのことで、雇用規模を350人に拡大するとのことであります。

北九州市はもともと国際都市として我が国に大きな貢献をしてきた地です。こういう状況の中でこれからもアジア太平洋の中核都市として大きな役割を果たしていくと思います。我々の企画構想する学科は必ず時代が要請する人材養成の拠点になると思います。

新設学部・学科と90周年から100周年に向かう東筑紫学園の建学の精神

さて、本学はもう10数年で100周年を迎えます。この約90年の学園史で一貫して建学の精神「筑紫の心」 ・四つの心、四つの生命力の大切さを伝え続けてきました。この四つの心・四つの生命力の均衡の重要性を語ってきました。

四つの心とは、「勇気、親和、愛、知性」のことでありますが、以上述べてきたこども教育学部でも食環境データサイエンス学科でも同じく重要なことです。後者の新学科ではデータサイエンスの新技術を修得する「知性」とそれらを通して世界の人とつながる「親和力」の発動が大切ですが、それらを本当に発動し続けるには、なんといってもやり続ける主体的勇気が持続的に発動できなければなりません。そしてそのためには、そういう学びができる自分を育んでくれた両親・祖父母、そして指導してくれる先生方、教材、教室に迄感謝と愛の心を発動できなければなりません。やはり四つの心が重要なのです。

4分の1や4分の2の部分的生命力・親和力や知性だけでは本当の学びと人格の形成には行き着けないと思います。情報が氾濫し何が本物かが判別しがたい時代、特に本学が提起してきた四つの心の成長と調和を修得し「四つの心・全き心」で最終的には分析判断するという決断姿勢が必要なのです。こども教育学部に進まれ将来教職に就くというような人は特に本学の教育理念・四つの心を修得し本物のこども教育者になってほしいと思います。四つの心を持った教育者になってほしいと思います。

本学の提起した教育理念はどの分野に進まれる人にとっても基本的に重要なことなのであります。専門的教科教育と建学の精神に基づく人格教育が「教育過程」の中で結びあっているところが本学の特徴であります。( 『拓く』本年号・41号に掲載した本論文は、この第2版では若干の加筆訂正を加えております。令和6年6月26日)