ブックリレー「私の一冊」 Book relay

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2021.10.11
宮沢賢治と彼の世界の一端を垣間見る 銀河鉄道の父

タイトル 銀河鉄道の父

  • 著者名
    門井 慶喜
  • 出版年
    2020年(単行本2017年)
  • 出版社
    講談社
この作品では、タイトルですぐに宮沢賢治のことだと分かる人が多いでしょう。
しかし宮沢賢治の作品を読んでいない方は、詩または「風の又三郎」や「銀河鉄道の夜」といった物語に触れてみてはどうかなと思います。
私ももっと読んでみたいと思います。

この本は、第158回(2017年下半期)直木賞受賞作で、父親の目を通して、息子をはじめとする家族を描いた作品であります。
著者の門井慶喜は、息子のために買ってきた宮沢賢治の学習漫画を見て書き始めようと思ったと言っています。
書簡や資料を駆使して書いていきます。

賢治の父親は信じられないほど愛情の深い方であったことが分かります。
彼は、ほとんどの子どもたちの就学などのお金を、自分の質屋の仕事で作ったお金から出してあげるのです。
賢治も父親に何度もお金の無心の手紙を書いていますが、ほとんど断ることなしに送っています。
父親の財力がなければ、作家としての賢治が存在しえたか分かりません。

残念なことに、賢治は急性肺炎のため、37歳の若さでなくなっています。
死後に、急速に名前が売れていき、あっという間に国民的作家になっていくのです。
5人兄弟姉妹のうち、2歳下の妹トシは、賢治とともに、学業が優秀でありましたが、結核のため、24歳の若さで亡くなっています。
人生は短く不幸であったにもかかわらず、芸術作品は後世に残っていったわけです。
人生の儚さを感じさせてくれますね。賢治とこの家族を見ていると。

賢治は短い人生ながら、極めて素晴らしい作品を世の中に残したのです。

本の推薦者

食物栄養学科・教授 永野 勇二 ながの ゆうじ
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